
PICK UPピックアップ
カクテルで街に新風を!
宇都宮に一大カーニバル、現る。
<後編>
#Pick up
宇都宮カクテルカーニバル from「宇都宮カクテル倶楽部」
しっとりとしたジャズに大人も子どもも踊らせたクールなジャムセッション、そして会場を彩る色鮮やかなカクテルたち。宇都宮のアツい一日を現地からレポート。
文:Ryoko Kuraishi
「サクレ・ラ・モンテ」を作る青木バーテンダー。甘酸っぱいスライスレモン入り「サクレアイス」はフローズンカクテルにぴったりの素材だ。
青空が広がり、夏日となった連休最後の日曜日。
東武宇都宮駅近くにあるオリオンスクエアで開催された「宇都宮カクテルカーニバル2011」は5000人超を集め、盛況を博した。
4回目となる今年は市内のショットバー23店舗に、フードブースで5店舗が参加。
ノンアルコールカクテルを含む約50種類のカクテルが、各店のバーテンダーによりワンコイン(!)で振る舞われた。
普段、バーやカクテルになじみの薄いファミリーや主婦も、ステージで繰り広げられるジャズや
白熱のジャムを楽しみながら
青空の下、本格的なカクテルに親しめるという趣向だ。
最高気温27度を記録したこの日、正午のオープンと同時に来場者が列を成したのは、
地元でおなじみのかき氷アイス「サクレレモン」(フタバ食品)を使ったフローズン・カクテル、
「サクレ・ラ・モンテ」だ。
宇都宮っこいわく「夏休みのおやつは、毎日サクレレモン!」。
それほどこの地に根付いた、いわばふるさとの味。
宇都宮に本社を構える乳業メーカー、フタバ食品の看板商品である。
「サクレ・ラ・モンテ」を考案したバーテンダー、青木政広さん(「パイプのけむり 池上町本店」店長)によれば
「ヨーグルトリキュールとパッションフルーツのリキュール、オレンジジュースに
サクレを丸ごと一個使った、贅沢なカクテルです」とのこと。
「今年のカーニバルは東日本大震災のチャリティを兼ねたイベントなので、
『サクレ・ラ・モンテ』と名付けました。
モンテとはフランス語で昇る、あるいは上がるという意味。
サクレを太陽に見立て、陽のある方に上っていく、そんなイメージです」
当日はステージの司会・進行に大忙しの佐々木均代表幹事。地元ラジオ局では自らのラジオ番組でパーソナリティを務めるそう。
数ヶ月前から取り組み始めたフタバ食品とのコラボレーションが遂に実を結んだわけだが、
現在はサクレに連なる第二弾コラボカクテルを企画中だとか。
もはやアイスをベースにしたカクテルはお手の物?
「フタバ食品のサクレしかり、とちおとめしかり、地元の企業と土地のものを使ったコラボレーションは
企業、バーテンダー双方にとって意味があることと思っています。
一緒に何かを作り上げる喜びはなかなか味わえませんし、
結果、こうした一連の動きが宇都宮を盛り上げることになれば、ますますやりがいを感じます。
もちろん『サクレ・ラ・モンテ』は店にいらしていただければ召し上がっていただけますよ」
一方、今が旬のとちおとめをふんだんに使ったカクテルが「とちおとめカクテル2011 」。
日本一のいちごの産地、栃木が誇るフレッシュなカクテルだ。
前述したように、2005年のバー・レディース・カクテル・コンペティションでグランプリを獲得した
女性バーテンダー、田代晴美さん(「パイプのけむり武井」)が手がけている。
どんな女性かぜひお目にかかりたい!と「パイプのけむり武井」のブースに向かったところ、
田代さんは午後に予定されているフラダンスのステージに出演する、とのこと。
バーテンダー、そしてフラガールの二つの顔をもつ田代さんに、バックステージで話を聞いた。
「(シェーカーを)振って、(フラを)踊って、毎年このイベントを楽しみにしているんです!」という田代さん、
黒いチューブトップに真っ赤なパウスカートが何ともお似合い。
2011のとちおとめカクテル、おいしさのポイントはずばり、何ですか?
「日本一のとちおとめを、まるごと飲み干す!そんなイメージで飲んだいただける、果肉たっぷりのカクテルです。
とにかく乙女チックに、かわいらしく。そう意識して作りました」
毎年、いろいろなバーテンダーがとちおとめを使ったオリジナルカクテルを考案し、
このイベントで発表していますね。
「同じ素材を使っているのに味も、見た目も全く異なるカクテルが出来上がる。
それはバーテンダーそれぞれのスタイルゆえですし、それこそがオリジナリティだと思っています。
私はフラを習っているのですが、フラとカクテルはちょっと似ていますね。
フラは全身を使って気持ちや思いを伝える。
バーテンダーはカクテルで気持ちや思いを表現する。
そう考えると、自分の身の回りにあるもの全てが、カクテルを作る際のインスピレーション源になっているのかもしれません」
バーテンダーにフラガール、二つの顔をもつ女性バーテンダー、田代晴美さん。
それではバーテンダーとして、普段から意識していることは何でしょう?
「例えばフラを始めたことは自分の人生でも大きな節目の一つなんですが、
そうしたものに出会えたのも、好奇心あってこそ。
常にアンテナを広げ、好奇心旺盛に目新しいことにトライし、あらゆるものを吸収して視野を広げていきたいと思っています。
そうした経験は必ず、カウンターでも活きてくると思うので」
フラの衣装から一転、バーテンダーのそれに着替え、今度はブースできびきびとシェーカーを振る田代さん。
彼女が考案したとちおとめカクテルはこの日、一般の公募から「トゥインクルベリー」と名付けられた。
さて、会場散策を続けよう。
青と白のストライプのテントが並ぶ一角に、バーではないブースを発見。
ここは?
「地元の酒問屋、横倉本店のブースです」
応対してくれたのは、社長の横倉正一さん。
日本ソムリエ協会認定のワインアドバイザーと、日本酒サービス協会認定の唎酒師・焼酎アドバイザーの資格も持つ。
横倉本店では地元の農産物を使い、宇都宮カクテル倶楽部が監修したカクテル「宇都宮カクテル」を販売している。
現在のラインナップは全8種、カーニバル当日の今日、最新作「王林茶プリンセスローズ」が発売になったばかりだとか。
「私どもの『宇都宮カクテル』は2009年3月に発売以来、販売累計10万本を超えたヒットシリーズで、
宇都宮の農産物を使って町おこしをしよう!というプロジェクトの一環として始まりました。
ただのボトル入りカクテルではなく、プロのバーテンダーがレシピ提供・監修した
本格派カクテルを自宅で味わおう、というコンセプトがポイントです」
スイーツにマッチするカクテル、ということで宇都宮カクテル倶楽部が提案したのが「ジョニ赤ハイボール」×ミントチョコ。試してなるほど!意表をつくマッチングだが、絶妙に合うのだ。
たとえば王林茶プリンセスローズは宇都宮市郊外のリンゴ園、「荒牧りんご園」の完熟王林(リンゴの品種)ジュースに、
市内の紅茶専門店「ワイズティー」厳選の有機セイロンティーを絶妙なバランスでブレンド。
ブランデーを加え、バラのエッセンスで香りづけしたという複雑な味わいだ。
「こういう複雑な味わい、レシピを提案してもらえるのも、
プロのバーテンダーとのコラボならでは」と横倉さんも絶賛する。
もちろんプロ同士のプロジェクトだからこそ、苦労も多い。
「やはり瓶詰めするたために火入れは欠かせませんが、それをすると風味が変わりますから、
なかなかバーテンダーからの許可が下りなくて苦労しました。
いちばん始めにリリースした『栃乙女ダイキリ』、『大谷梅ファジーネーブル』、
『杉並木ビッグアップル』の3種は、開発に1年半以上、20回以上試作を重ねた苦心作。
また昨年はモモとブドウで何か新作を、と企画していたんですが、あの通りの不作で。
農産物は生ものですから、なかなか人間の思うようにはなりませんねえ」
宇都宮カクテル倶楽部が監修を務めた「宇都宮カクテル」。横倉本店のウェブサイトからも入手可能だ。http://www.yokokura.co.jp/
宇都宮カクテル倶楽部代表幹事佐々木均さん(「ルシファー」)も、
地元企業や地物とのコラボに意義ややりがいを感じつつも
「企業とバーテンダーはそもそもスタンスが違いますから」とその苦労を語る。
「宇都宮カクテル倶楽部は一つの団体ではありますが、それぞれが自分の店を構えるバーテンダー=個人商店主の寄り合い。
宇都宮=カクテルの街を意識して活動していますが、やはり企業とは意識の違いがあります。
どんな種類のコラボカクテルにしろ、プロのバーテンダーとして自分たちの名前が出る以上、
つまらないものは出したくないし、出す意味がないと思っている。
そして今までに無かったものを発表して、『カクテルの街宇都宮』を広めたいと熱意を持って活動しています。
これは双方に共通する思いではありますが、バーテンダーからの要望は採算度外視だったり、あるいは開発に何年もかかったり、
両者のその溝を埋めて行くのに苦労したのも事実です。
でもその苦労の甲斐あって、細やかな、手作り感のあるものが完成したと自負しています」
なるほど。
そしてこうしたコラボ企画はまだまだ続くようですが......。
「もちろん、自分たちの作ったレシピのカクテルが販売店に並ぶというのはモチベーションがあがります。バーテンダー冥利につきますよ!
だからカクテルというジャンルで企業とコラボレーションを続けるなかで、
自分たちがこだわるべきは宇都宮らしい『本物』を模索して発信し続けること。
そして世間が少しずつそれを認識してくれればいいと思っています。
今日のカクテルカーニバルもその一環。
青空でワンコインのイベントだけど、宇都宮のバーテンダーはきちんとしたサービスができる、
これだけの技術を持ったバーテンダーが一堂に会しシェーカーを振っている。
それを世間に発信し続けることに意味があると信じています」
ちなみに今日のイベントは東日本大震災復興支援ということで、
収益金は被災地へ送られることになっている。
明け方までカウンターに立っていたバーテンダーが、ほとんど寝ずに会場に駆けつけ、夕暮れまでボランティアでカクテルを作りつづける。
宇都宮をカクテルで盛り上げていこうという熱い思いがあればこそ、このイベントが成立するのかもしれない。
残念ながら今回のイベントは見逃してしまった、というあなた。
宇都宮カクテルのアツい現場を感じたければ、次回、9月11日(日)の「カクテルナイト」へ、ぜひ。
秋の訪れをカクテルでしっとりと、そんな日曜の夕暮れも乙ではないですか。
SHOP INFORMATION
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宇都宮カクテル倶楽部 | |
TEL:028-639-5599(18時〜翌3時) URL:http://www.ucclub.net/ |