
PICK UPピックアップ
種子島から世界へ!
アグリコールラム「ARCABUZ」が目指すもの。
- 後編 -
#Pick up
木村成克/Kimura Shigekatsu from「 大東製糖種子島」
文:Ryoko Kuraishi
Kothe社のハイブリッド式蒸留器。
7月のある日、日本ラム協会のメンバーを招いて「ARCABUZ」の試飲会が開催された。
会場は大東製糖が展開するベーカリー・レストラン「Farm to Me」(清澄白河)。
テーブルに並んだのは、アルコール度数の異なる「ARCABUZ」。製品によってアルコール度数に幅がある(57〜60度)ということで、57度と60度をテイスティングすることに。
まずはストレートで、そして造り手がおすすめする飲み方でテイスティング。
「はじめにストレートで飲んでいただき、サトウキビの味わいを感じていただきたい。
お好みで加水すると、みずみずしい香りが開いてきます。
もう少しローアルコールで試したいという場合は、シンプルなソーダ割りがいいでしょう。
ラム1:ソーダ5の割合でお試しください。しっかりとサトウキビの風味を味わっていただけます」(大東製糖種子島の代表取締役社長の木村成克さん)
大東製糖が展開するベーカリー・レストラン「Farm to Me」で開催された試飲会の様子。
テイスティングコメントは「ボタニカル感がはっきりしており、フレッシュで青々しい香りが際立つ」「アルコール感はしっかりあるが、とげとげしい感じはない」「60度のほうが味わいはライトに感じられる」などなど。
搾り方や蒸留についての意見交換も行われた。一般的にサトウキビを搾る場合、繊維を水につけてふやかしてから搾る方法(中加水法)を取ることが多いが、これだと苦味やえぐみも出てきてしまう。
そこで「ARCABUZ」では水を使わずに搾っているのだが、これは400年ほど前、マルティニークで始まった製法で、「マルティニークの伝統製法を、日本で稼働したばかりの蒸留所が取り入れているのがおもしろい」とのこと。
実はマルティニークでもこうした製法を見直す原点回帰のムーブメントがあるそうで、日本では「ARCABUZ」がこれの先駆けといえるのかもしれない。
また、ラム協会のみなさんから好評だったのが、八角形のシルエットが印象的なボトル。
こちらはポルトガルの火縄銃の砲身をモチーフとしたもので、日本人として初めてフェラーリのデザインを担った工業デザイナー、「KEN OKUYAMA DESIGN」の奥山清行が手がけている。
「ARCABUZ」の特長を活かしたモヒート(左)。「ARCABUZ」と同じサトウキビから造られたシロップ・デ・ケーン(さとうきび蜜)を加えている。人形町の「Bar内藤」が考案し、同店や「Farm to Me」(右)で提供中だ。
高く評価された、美しいボトルデザイン。
「今回のプロジェクトでは、その道のプロフェッショナルがさまざまな形で関わってくださっています。
プロジェクトマネージャーは『日経TRENDY』元編集長で商品ジャーナリストの北村森さんが務めてくださいましたが、奥山さんにボトルデザインをお願いできたのも北村さんのネットワークのおかげ。
このボトルが、私たちには想像もしなかった世界観を広げることができたと思います」
続いて、ホワイトラム発売以降の展開についての質問が飛び出した。
現在はゴールドラム、およびダークラムも仕込んでおり、ゴールドラムは来年以降リリース予定。
さらに蒸溜所ツアーについても、バーテンダーやプロフェッショナル向けのみならず、一般を対象にさまざまな切り口で展開予定。
東京から最短3時間でほどでアクセスできる便の良さを生かし、種子島×「ARCABUZ」ツアーを積極的に企画していくそう。
火縄銃をイメージしたボトルデザイン。「World Rum Awards」のボトルデザイン部門でベストボトルデザイン賞を受賞した。
種子島のテロワールを感じられる酒ツーリズムを。
「昨年、クラファンのリターンとして実施した蒸留所ツアーでは、蒸留所を見学後、種子島の地場のフルーツを使った『ARCABUZ』ベースのオリジナルカクテルを味わってもらいました。
また、私たちは循環型生産の取り組みの一つとして、搾った後のバガスを堆肥化して農園に撒くことを始めていますが、畑ツアーではこうした実験的な取り組みをご紹介しました。
手付かずの島の自然と、それを尊重する施策を知っていただける機会になったと自負しています。
このように、ラムをきっかけに種子島に足を運んでいただき、サトウキビのことを知ってもらい、この島のテロワールを感じもらい、種子島のファンになっていただく。
私たちの目標は、種子島を拠点に、世界が認めるラム酒づくりを持続可能な産業とし、さとうきび栽培を次世代につなぎ、永続や地域振興へ貢献することなんです」
半年後には樽熟成したゴールドラムが完成する予定で、来年の「World Rum Awards」に出品するつもりだ。
観光化されていない手付かずの自然が広がるこの土地で木村さんたちが掲げているのは、”バイオフィリア”(生命愛)をベースとした循環型のものづくり。
「種子島は焼酎文化の島であり、島民のみなさんにとってもラムはもの珍しい存在ではありますが、『ARCABUZ』が島の人々に愛される存在となり、サトウキビや種子島に興味をもっていただくための引き出しの一つになることを目指していきます」
SHOP INFORMATION
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大東製糖種子島 | |
891-3602 鹿児島県熊毛郡中種子町牧川536 URL:https://www.arcabuz-rum.com |